お酒について
授乳中にお酒は絶対ダメだよ!と一般的に言われることが多いかと思います。
「赤ちゃんとお母さんにやさしい 母乳育児支援ガイド ベーシックコース 医学書院」でもアルコールはおすすめされていませんし、アメリカ小児科学会も
アルコールは子どもの発達に悪影響を与える可能性があるため、アルコール飲料の摂取は最小限の量に抑えるべきである。
と書いています(「母乳と母乳育児に関する方針宣言」(2012年改訂版)翻訳文 Executive Summary JALCサイトより)
あれ?と思いました?
1滴でも飲んだらダメとは書いてないんです。
まず授乳とくすりのことがよくわかる本 Medication and Mother’s Milk でエタノールを調べます。
少し引用します(2008年日本語版より)
量と期間が制限された場合は、乳児に有害であるとはみなされないが、アルコールは有意な量母乳に分泌される
じゃあどれくらいなら影響がほとんどないと言えるのでしょうか。
アルコールが血液に入った場合、その濃度が半分になるのに30分かかるのだそうです。
(半減期といいます。半分になるのにかかる時間です。高校の物理で学びますね。原子核の崩壊で学んだと思います。)
飲んだあと、30-90分で母乳中のアルコール濃度は頂点に達する、のだそうです(だれでもできる母乳育児 メディカ出版より)。
90分時点の血中アルコール濃度を1とすると飲終えた時点から2時間後に1/2 2時間半後に1/4 3時間後に1/8 3時間半後に1/16 4時間後に1/32 だいぶ少なくなってきました。
多くのものは5半減期で「まあだいたいなくなったろう」と判断することが多いです。1/32の時点ですね。
もちろん飲んだ量にもよりますが、この時間がひとつの目安となるかもしれません。(深酒している場合は話は別ですよ~)
飲む量は、お母さんの代謝能力や体重によっても変わってきます。さまざまな文献を調べるとたまにビール1杯やグラスワイン1杯くらいならまあいいでしょう、ということのようです。
じゃあ、母乳を搾って捨てればいいんじゃないの?と思われるかもしれません。
今日の話の本題はここからなのですが、搾って捨てることに意味はありません。
前回、乳管の中の母乳の水分が再吸収されるという話を書きました。そう、母乳の作られる袋や乳管はもれない袋ではないんです。
Dump this breast-feeding mythという記事を紹介します。
血管というのは半透膜なのだそうで、たんぱく質のような大きな分子は通らないけど、水.NaCl.ブドウ糖などの小さな分子は通り抜けるのだそうです。アルコールはここを通りぬけ、血液から母乳に入ります。
最初は血液のほうがアルコール濃度が高いので、アルコール濃度の低い母乳のほうにアルコールが移動していきます。
その間にも最初のほうで書いたように、お母さんの体はアルコールを代謝(分解)しつづけています。
いつか血液のアルコール濃度のほうが母乳より低くなると、今度は母乳中からアルコールが血液に移動して行きます。
こういうやりとりで最終的には母乳中のアルコールがなくなる(もちろんこのときには血液中にもアルコールは残ってない)、ということになります。
つまり体内にある母乳中のアルコールはいつかなくなるのです。
もし酔っている最中に搾って捨てたとしても、そのあとにまだ酔っている最中に体内で作られた母乳には上記のような理由で、血液中からアルコールが入ってしまうのです。
これが搾って捨てることに意味はない、ということです。
搾って捨てるよりも時間を開けて授乳したほうがよさそうですね。
ラ・レーチェ・リーグインターナショナルのサイトにもアルコールのことは詳しく出ています。
引用されている文献は上記にだしたMedication and Mother’s Milk のようです。
年末年始、お酒が出てくる席も多々あるかと思いますので書いてみました。
■追記■2015年12月24日 お酒について 血中アルコール濃度を考えるもどうぞ
参考文献:Medication and Mother’s Milk (日本語訳薬剤と母乳)
上記サイトさま
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