母乳育児の悲しみを癒すこと

Healing Breastfeeding Grief : How mothers feel and heal when breastfeeding does not go as hoped Hilary Jacobson
という本を読みました。
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たまたまLa Leche League International のwebマガジン、Breastfeeding Today を読んで見つけました。
その記事はこちら breastfeeding grief : emotional healing when breastfeeding does not work
そして4月20日だけ、kindle無料キャンペーンだったので、ありがたく読みました。
3章に分かれていて、パート1は癒すための最初のステップ。パート2は日本では一般的ではない療法の紹介もあるのですが、気持ちの折り合いの付け方が書かれています。呼吸法や話す事、評価せずに自分の感情を感じる事などについて書かれています。パート3は経験談です。支援する立場の方がうまくいかなかったケースなどについてもかかれ、心の持ちようの参考になります。
まずはパート1を読めば、悲しみと怒りについて理解が深まると思います。
さらに理解を深めたい方は著者のサイトをどうぞ
いくつか印象に残った言葉を引用します。訳は洗練されてませんが
(前提:sariは第一子で思うようにいかなかった経験があります)

あなたはきっと、赤ちゃんのためにあなたの状況で出来るベストをつくしている。
母乳育児がうまくいった人やミルクだけで育てようとする人よりも産後うつ病の発生が2倍になる。
(自分の母と祖母の話のあと)、私たちが私たちの話をシェアしたり、他の人の話に耳を傾けることは大切な事。それは私たちが知っていること以上を意味する。
(注:envyとjealous envyのほうが強いです) 私にとって妬みは嫉妬より毒がある。嫉妬はあなたが持つことを私も持つことができると願う事。妬みは他の人が持っているものを取ったりダメにしたくなる要素がある。
お母さんが授乳できない場合、古代と原始のパターンが刷り込まれている彼女の脳は、赤ちゃんを失ったと信じてしまう可能性がある。
どうか、母乳育児の成功を母親としての成功と間違えないでください。
後戻りはできないけど、心をよりよい状態に前進しようと決意することはできる
触れる事は赤ちゃんの最初の言葉
D-MERについて(授乳で気分が悪くなることもある を参照してください)
悲しみと怒りは姉妹のよう。しばしば一緒にあわられ、別々にすることが難しい
産後の怒りは、それを向けるよい対象が多くの場合ない。そのため、間違った人々に矛先を向ける
母乳育児支援への怒り その人たちとコミュニケーションすることが母乳育児支援がより理解ある方向に動く助けになれる

とても辛い状況ですね。気持ちが苦しい。
こういうことをわかった上で、その辛さを理解したうえでその悲しみと向き合う支援をしている人もたくさんいます。
母乳育児支援者はその悲しみも支援するのです。
なんとなく、世間のイメージは母乳育児支援というと、マッサージに食事制限、なにもかも子どものために耐えて当たり前、出来ないのは熱意が足りないから、できなければあなたのせい、というようなものかもしれません。
そういう支援者しか見てこない、もしくはイメージできないと、「母乳育児支援って、できる人だけたたえて、できなかった人はどうなの?」と問いたくもなるでしょう。
できなかったsariは、努力不足とも、sariの体のせいだとも言われませんでした。まさに上にある
「そのときにもてるだけの知識で精一杯やってベストを尽くしたのよ。がんばったよね」
と言ってもらいました。
実際そうだと思っています。
そのころ、1995年。ネットがまだ大してない頃の情報といえば、本かテレビ。本だって、商業的に大きな出版社が大々的に宣伝しているものは手に入るけど、母乳育児を科学的根拠を元に解説した本はほとんどありませんでした。だから情報にめぐり合う事は大変なことでした。今はスマホで簡単にあふれるほど情報は見られるけど、やっぱりめぐり合う情報は数が多いものになります。そして検索サイトはヒット数が多いほど最初に来る傾向があるので、少数派になる情報はなかなか知られません。
数が多い ≠ 正確な情報
であることもよくあります。
災害でも書いたように、母乳育児を続けられる人が続けたほうが、ミルクで育つ赤ちゃんの生存率が高まります。
アメリカで、ハリケーンのときに赤ちゃんと屋根に避難したお母さんが5日間安全な水が手に入らずに赤ちゃんがなくなってしまうという悲しい事がありました。だけど、そのお母さんは救出後に胸がはって痛んだのだそうです。母乳をあげる事ができるとは彼女には思えなかったのだそうです。もし回りに母乳育児経験のある人がいたら、飲ませてみたらとすすめることができたかもしれません。
そして厚生労働省の調査では90%以上の方が母乳で育てたいと思っているそうです。
ただ、適切な支援があっても1割ほどの母子は、母乳だけで育てる事ができない素因があるそうです。
その悲しみも支援する母乳育児支援者がいるんだよ、ということをちょっとだけ知ってほしいと思って書きました。
そのほか参考文献:
世界母乳育児週間 アクションホルダー2009
http://www.worldbreastfeedingweek.net/wbw2009/images/english_2009actionfolder.pdf (4ページ目左)
翻訳は母乳育児支援ネットワークで販売中
プロセスコンサルティング E.H. シャイン 白桃書房

書籍

Posted by sari