哺乳類 その1

「哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎 驚異の器官がうまれるまで」 酒井仙吉著(講談社ブルーバックス)を読みました。
この本は11章あり、7-10章が「乳」関連です。まえがきに著者が書いてらっしゃる言葉が印象的なので引用します

理系の研究者は論文作成で正確に文章化することに気を遣い、分かりやすさを重視することはほとんどない。

この本は一般的な読み物としては難しいです。タイトルに引かれて手にとった方はがんばって7章まですすめば興味深いお話が待っています(^^)
今までに 牛と人間は構造が違う でも牛をとりあげました。この本は哺乳類全般についての話です。友人の獣医さんに借りた本でよくわからなかったことの答えもありました。
まず興味深い!と思ったのは哺乳類の子どもが飲む乳の量です。一般に1日に飲む量は子の体重の1.5割、なのだそうです。乳の成分は動物によって違い、成長が早い動物の乳はタンパク・ミネラルが高い。成分は同じ動物でも時期によって成分を変える。ここは人間も同じですね。初乳と成乳では成分が異なります。
乳は成分がすべて水溶性になっている(脂肪も含む)。脳は大量のブドウ糖を消費するが、血中ブドウ糖は正常値があり、それを超えることはできない(超えてしまえば糖尿病なので)。そのため、ブドウ糖ではなく、乳糖という形にして乳に糖を供給している。乳糖は分解されてブドウ糖とガラクトースになるが、一部は分解されず腸内細菌のエサになる。オリゴ糖が人工乳に入ってなかった時代は消化器系で障害が起こりやすいと知られていたのだそうです。
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乳腺には強力な抗菌システムがあり、細菌が混入してもほぼ無害にできる。牛の場合、乳の中のカゼインが消化されるとモルヒネと類似の生理作用のあるペプチドがうまれ、これにより積極的に子どもはおとなしくなるのだそうです(生後2ヶ月限定)。
抗体=免疫グロブリンのうち、初乳はA,G,Mを含み、Aは消化管の表面に取り付く。Gは未熟な腸の細胞の隙間から体内に入る。赤ちゃんの腸が未熟なまま生まれるのにも理由があるんですね。ちなみに牛の場合、初乳を飲むのが半日過ぎてからだと細菌感染で死をもたらすこともあると書かれています。
次回に続きます。

書籍

Posted by sari