授乳の本当の「よい姿勢」

2015年12月3日

「よい姿勢」という言葉が誤解されているように思います。
よくきくのが、学校で「背筋を伸ばしてまっすぐ座る」をよい姿勢として、授乳時にもそうすべきとおすすめされた話です。
腰痛や肩こりによい姿勢なのでしょうが、授乳中は3キロ以上の赤ちゃんを抱っこしているし、さらに授乳もするのでそういう「いわゆるよい姿勢」とは別の姿勢が授乳にとっては「よい」姿勢となります。
前提として、誰にも通じる普遍のよい姿勢があるわけではなく、どんな飲ませ方でも赤ちゃんの体重がふえ、お母さんが楽しければ問題になりません。「よい姿勢」とは、そのお母さんと赤ちゃんの授乳がうまくいくようなものとなります。
いままでの「おさらい」
抱っこについてで赤ちゃんの顔が体に対してまっすぐ正面を向くとごくごく飲める、という話をしました。授乳クッションの上に仰向きで寝かせると、首だけひねって吸うので飲みにくいです。
（左：飲みにくい　右：飲みやすい、ごくごく飲める　）

新生児の授乳の位置では赤ちゃんのあごがひけていると飲みにくい、という話をしました。
（ごくごく飲むってこういうことですよね！ちょっと上を向いてのど通りがよくなるようにしていますね。）

楽に授乳するでは背もたれによりかかる授乳について話をしました。

～　ここまで「おさらい」　～
今回は新しく写真で説明します。
3キロ以上の赤ちゃんを数十分抱っこすることを1日に10回も繰り返すには、お母さんが楽な姿勢でないと続きません。
「背筋を伸ばして寄りかからない、いわゆるよい姿勢」をすることで授乳にとって利点がある、という科学的根拠はありません。ので、どうどうと楽な姿勢をお試しください（＾＾）
　
写真のように、背もたれによりかかります。特別な道具は要りません。壁にクッションや座布団をあてて寄りかかればOKです。
できればお母さんも赤ちゃんもは薄着、もしくはお母さんはお腹を出して赤ちゃんとぴったり密着するようにします。
そして、赤ちゃんを片方の乳房に向かうように抱っこします。このときは腕で抱っこするというよりは、お腹の上に乗せて軽く腕で支える感じです。赤ちゃんの体重はお母さんのお腹が大部分を支えますので、お母さんの腕には負担はかかりません。
このとき、赤ちゃんの体と首をねじらないように、赤ちゃんのおへそと鼻がまっすぐ一直線の前向きになるように気をつけます。
生まれたてだったらお母さんの体に垂直に抱っこできますが、数ヵ月たって大きくなると少し斜めにしてもいいですね。
背の高くなった赤ちゃんがお母さんの体からはみ出しそうなときには足をお母さんの体に巻きつけるようにぴったりとお尻から足をひじで包み込むように抱っこします。写真では左ひじでお尻を体に沿わせるようにしています。右の写真では、赤ちゃんの頭は右ひじの内側よりももっと手先側、つまりお母さんの右乳房の真ん中に赤ちゃんの鼻が来ています。
こんな風にすると赤ちゃんが自分から吸い付こうと意欲を見せる場合が多いです。
吸い付くときにちょっとだけ気をつけたいのは、赤ちゃんのあごが乳房にくっついていることです。そうなっていれば、きっと赤ちゃんのあごは引けておらず、ごくごく飲める姿勢になります。そのためには赤ちゃんの口の位置を乳首に合わせようとするのではなく、赤ちゃんのあごを乳房につけたまま鼻に乳首が来るように抱っこする、もしくは乳房を持ち上げて鼻の位置に持ってきます。すると大きな口をあけて吸い付きます。
これを図で示します。
こちらに吸い付き方の3秒アニメがあります。

こんな感じになっているといいですね。
youtubeにBIOLOGICAL NURTURINGLAID-BACK BREASTFEEDING FOR MOTHERS　のプロモ動画があります。参考にどうぞ

もうひとつ　BABY-LED BREASTFEEDING… THE MOTHER−BABY DANCEもどうぞ

こういう姿勢をすることでおばあちゃん世代はびっくりするかもしれません。お母さんと赤ちゃんにとって楽でうまくいけばそれでいいのです。もちろん、私は自分のやり方のほうがいいわ、という方もそれでOK!
赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイドベーシックコース　Unicef/WHOには授乳の４つのポイントが掲載されています。それが出来ていれば、どんな抱き方でもOKです。引用します。カッコ内はsariがつけた説明です。

The four key points
– with baby’s head and body straight;　（頭と体がまっすぐ）
– with baby’s body close to her body;（赤ちゃんとお母さんが密着）
– supporting baby’s whole body (if newborn);（赤ちゃんの体全体を支える）
– with baby’s face facing her breast, and baby’s nose opposite her nipple.（赤ちゃんの鼻を乳頭に）

2015年12月追記
吸着の情報に参考になる動画リンクを掲載しました。
参考文献：
BIOLOGICAL NURTURINGLAID-BACK BREASTFEEDING FOR MOTHERS　With contribution from Suzanne Colson, PhD, Kittie Frantz, RN, CPNP-PC and Nancy Mohrbacher, IBCLC, FILCA
BABY-LED BREASTFEEDING… THE MOTHER−BABY DANCE　WITH CHRISTINA M. SMILLIE, MD
Baby’s Perspective series　By Kittie Frantz, RN, CPNP-PC
BABY-FRIENDLY HOSPITAL INITIATIVE　Revised Updated and Expanded　for Integrated Care　SECTION 3
BREASTFEEDING　PROMOTION AND SUPPORTIN A BABY-FRIENDLY HOSPITAL　A 20-HOUR COURSE FOR MATERNITY STAFF