つぶやき 母乳の販売についての報道など

気が重い報道がありました。
報道のurlはすぐ消えてしまうので、内容を書きますと、母乳の売買です。
購入した「母乳」と言われる液体を検査したところ、人工乳の成分と細菌が多く見つかった、というものです。
このことについてTwitterをみていますと、最初の頃はこの購入者を責めるような論調がありました。
購入者はわらにもすがる思いで買ったのかもしれない、そのときに持てる情報で精一杯しようとした結果なのかもしれない。そして検査によって真実がわかってきっとショックを受けている中、ネットで母としてのありようを責めるような文言が散見される状況は、本当にお気の毒としかいいようがありません。このお母さんの気持ちを考えると、とても胸が苦しくなりました。
そのうち、母乳育児支援者がよろしくない、という論調に移ってきました。
たしかに支援者の中にはいるんです。「母乳だけが素晴らしい」という人が。そういう場合はですね、こういうことがよくあります。
「母乳だけで育てられるようになったら、私(支援者)のおかげ」
「母乳だけにならなかったら、あなた(お母さん)の努力不足」
sariがもっともしんどいなあと思う場面です。こういう支援者だけではないということを知ってもらいたいと思います。
sariやその仲間のおこなう支援は上記のようなものではありません。お母さんの希望を聞いて、それに沿った支援をする、です。
希望を聞いたところ、そのお母さんが根拠ある情報や現実によく起こる状況をご存じないことも多いので、その場合にはこちらから科学的根拠ある情報を提供します。その上でどうするかをお母さん自身が決めるお手伝いをさせてもらっています。
医師の中にもさまざまな方がいて、特に最近世間をにぎわすようなガイドラインに沿っていない医療をすすめるような本を書いた医師もいます。批判をされている方も多いです。だからといって「医師はみんなそうなんだ」という批判はされていません。
私たちも同じように考えてほしい。「母乳育児を支援している人」を等しく同じ考えだと断言して批判されることは辛いです。
さて、人間は哺乳類ですから、そもそも本能的に赤ちゃんに母乳を飲ませたいと希望することは不思議なことではありません。
その希望をかなえるために支援をするのですが、現在の日本の状況では「母乳で赤ちゃんを育てるための支援」は不足しています。
いままでにも書いてきたように、助産師さんであっても「適切な抱き方と吸着」をアセスメントしてお母さんを支援できる方にsariはあまりお会いできていません。プロラクチンやオキシトシンなど授乳に関係するホルモンのことを考えれば、生後すぐに授乳してみることが効果的なのですが、生まれたらすぐに計測して服を着せて新生児室にお預かりで翌朝来たときには赤ちゃんはミルクでお腹いっぱいだったりする話もよく聞きます。生後初日の赤ちゃんの胃のサイズはティースプーン1杯にしかすぎません。だからほとんど出ていないように見える母乳で足りるのですが、そのことも知られておらず「どうせ出ないんだからミルクにして、出始めたら母乳を練習してみればいいじゃない」と言われることもよくあります。母乳は乳房が張ると産生量が減りますから、こういう支援をするとどうなるかは想像がつくと思います。そして母乳に足して赤ちゃんに与えるものとして糖水という施設もあります。これは黄疸のリスクが上がりますし、体重が増えません。補足の適応としてふさわしくありません。
よく何割かのお母さんはがんばっても出ないんだから、母乳のことをいうな、という方もいます。でも日本では適切な支援をされてない状況ですので、その「何割」に根拠はありません。データすらないんです。
こんな風に、日本の母乳育児支援は科学的根拠あるスタートにも立っていない状況です。
科学的根拠ある支援のスタートにたつ前に、「母乳育児を支援する人がいるからこんなことになるんだ」となると、ますますお母さんの哺乳類としての望みがかないづらい世の中になっていくかもしれません。その事がsariは心配です。
最後にTwitterにsariが書いた文章をまとめます。

母乳売買の件で、そのお母さんにとって必要な言葉は「ミルクでも育つ」ではなく、「 母乳をできるだけあげたいのね、一生懸命がんばっているわね」と認められること。その上でハーブティのようなものよりも科学的根拠のある情報の中からお母さんが選択することができるような支援が必要です。「ミルクでも育つ」のは情報提供のひとつですが、このお母さんがその情報を受け入れがたかったのは事実です。情報提供には方法があります。お母さんは子どもにとってよい事を選びたいと思っているので、必要な場合にミルクを足す必要性をお話すれば、自分で選んで決めるでしょう。ただ、その状況が大切で、コミュニケーションが不足した場合はいくら情報が提示されてもお母さんが家族のためになる選択をできない可能性があります。
そのコミュニケーションの方法を支援者が知ることで、お母さんに無理強いすることなく情報提供することができます。
https://mina2012.com/?p=97 母乳育児おさらい

参考文献:
厚生労働省 インターネット等で販売される母乳に関する注意
消費者庁 インターネットでの母乳の購入に御注意ください

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Posted by sari