ミルクの広告

2015年4月21日のニュースで、中国では乳児用ミルクの広告が禁止される、とありました。
それについての日本の反応は、中国はいきすぎだとか、母乳推進って出ない人もいるのに!というものが多かったと思います。
過去にもミルクの広告については
ミルク(人工乳)について    に書きました。
実は1981年第34回世界保健総会にて採択された「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」の中で消費者一般に対する広告は禁止されています。インドやブラジルはこの国際規準を守っている社会です。
この国際規準の目的は「安全で充分な栄養をすべての乳児に供給すること」です。
安全に人工乳を使ったり選んだりできるような、ミルクのパッケージに関する勧告もあります。これを飲ませればこんな健康な赤ちゃんになる、と想起させる写真などはダメなんです。それはイメージではなく、ちゃんとお母さんが選べるようにするため(選ぶ選択肢にはミルクのブランドだけでなく、母乳も入るかもしれません。)
母乳推進のためだけと誤解され、だから母乳育児支援の人は母乳のことしか考えてない、どうしようもないといわれるのは悲しいです。
実は世界では国際規準の実施のされ方は国によって大きく異なります。法律になっている国もあれば、業界が自主規制をしている国、なにもない国、さまざまです。2014年のIBFANの報告によれば日本はカテゴリー6、あまり実施されていない国です。日本より実施されている国は138カ国あります(カテゴリー1から5までを加算) 中国はカテゴリー3。ミルクは母乳が手に入らない子にとって必要なものだしすばらしい発明です。ただ、危険な使い方をされるリスクがある売り方や母乳で育てたいお母さんの気持ちをくじくことを避けることが必要なのです。
広告を見て、ほしいなーと思うもの、ありますよね。
お菓子なんかネットで取り上げられるとすぐに売り切れてしまいます。必要ではないのに、なんとなくほしくなる。洋服もそうですね。たんすにいっぱいでも、やっぱり流行りのものがほしくなる。
そんなものと同じような広告が問題なんです。
世界には魅力的に広告された人工乳のほうが母乳よりよさそうに見えて使い始めたり、出産祝いにプレゼントされたりするケースがあるそうです。日本だと問題ないのでしょうが、その後買い続けられなかったり、衛生的に使うことが出来なかったりして、赤ちゃんが病気になったり亡くなったりした事実があります。そういうことがあるんだとちょっとだけ知っておいてほしいなと思います。
そして、母乳は儲かりません。ミルクとそれに付随する製品はGDPに入りますが、母乳は入りません。儲からないことをあえて国がするのは、国民の健康に関する大切なことだからなのかな、とsariは思いました。
【追記 2015.5.15】鎌田實医師の「八ヶ岳山麓日記」聴診器でテロと闘う(7) に難民キャンプでのミルクを使う支援の様子が書かれています。ただ配布するだけではダメなのだということがよくわかるすばらしい記事でした。
参考文献:
http://www.ibfan-icdc.org/index.php/publications/publications-for-sale
State of the Code by Country 2014 (‘Blue SOC’) Poster
過去のバージョンは無料で読めます。
http://ibfan.org/code-watch-reports
2006年と2004年は読むことが出来ました。

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Posted by sari