「正しい」
Full Moon Luc Viatour / www.Lucnix.be wikipediaより
高校生のときに理科の教科書に載っていたDNAの2重螺旋の図をみた美術の先生に、
「今はそんなのが載っているんだ。自分が高校生の頃にDNAはそうなっているんだと言われ始めたところだったのに」
といわれたことがあります。
さらに物理の先生には
「教科書は正しくない」
と言われました。
その理由は
「教科書は今わかっている限りの『確からしい』ことが載っているだけ。それが正しいかどうかなんてわからない。今当たり前のように教科書に載っていることも、今考えられる限りの有力な学説であって、今後どうなるかわからない。」
と。確かに子どもたちの教科書を見て科学は進歩しているなと思います。そういう意味では「正しさ」は存在しないのかもしれません。
お月様がどうやってできたかについてすら、ここ60年でさまざまな説があります。
支援者の言葉がその後のお母さんの人生を大きく左右することはあります。
sariにとってショックな言葉は「赤ちゃんが怒っている」でした。
「怒る」という言葉には怒る「対象」があると考えられます。
赤ちゃんがむずがってうまく飲めないときに、助産師さんという赤ちゃんのプロから
「今赤ちゃん怒っちゃって無理ね~」
と言われて、赤ちゃんは私に怒っている!母として赤ちゃんを満足させてあげられないのだ!というショックと挫折感を抱きました。はたから見ると顔を真っ赤にして不機嫌そうに泣いている、そりゃ怒ってると表現される状態だろうと今なら思います。
きっと
「赤ちゃんをなだめて、今よりもっと落ち着いた状態でやってみるといいよ」
ということが伝えたかったのかなと今振り返って思います。
が、スムーズにいってない状況でそれを言われると、
「ああ、私は赤ちゃんを怒らせる悪い親なんだ」
と感じました。自信を失う状況です。
「怒る」の代わりに「落ち着かない」」といわれると違います。
「落ち着かない」のは対象が必ずしもあるとは限りませんので、心のもちようがかわってきます。
「今、赤ちゃんなんだか落ち着かないのかしらね。ちょっと抱っこして気分転換してみましょう」
なんて言われたら落ち着いて対処できそうです。
最初に書いた「正しい」という言葉も子育てには気を使ったほうがいい言葉のひとつかもしれません。
例えば「正しく抱っこすれば」なんて言ってしまうと
「私はいままで間違っていたんですね。」
と自信を失うお母さんがいます。
「正しい」の反対は「異常」とか「悪い」「間違っている」とネガティブな連想を起こす言葉が多いです。
そんなわけで、科学的根拠がある方法であっても「正しい」を避けたほうが余計な心配をさせずに済むと感じています。
例えば
「正しい姿勢で授乳する」
は
「赤ちゃんが効果的に飲めるような姿勢で授乳する」
に言い換えられるでしょう。
今知られていて、科学的根拠を元に情報提供しているものは
「今現在、有効だと考えられていること」
であって、
「将来もっと役に立つ方法が見つかる可能性はある」
のです。
「未来永劫ずっと正しい方法」
というわけではないのです。
乳汁産生抑制因子(FIL)が知られていなかった過去には、授乳間隔を空けるほうがよい、とされていた時代もあります。過去の母乳育児に関する話には今になるとびっくりするようなものもたくさんありますが、それが「正しい」と思われていた時代もあります。
過去の母乳育児の歴史に関心のある方は以下の参考文献をどうぞ。
参考文献:「母乳育児の文化と真実」Baumslag N, Michels DL, 橋本武夫監訳
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