お宮参りで乳腺炎 2 脂肪について考えました
前回に引き続き、乳腺炎を考えてみます。
以下、科学的かどうかは?なところもありますが、計算してみました。(今回は有効数字とか考えてません。^^;)
母乳中の脂肪球は母乳を作る袋(乳腺房)でできます。袋を構成しているのが乳腺上皮細胞です。その細胞の中から、脂肪球は出てくるそうです。(参考:http://www.torii.co.jp/health/lifescience/pdf/45_2.pdf 鳥居薬品株式会社 のサイトより。ここのマンガ免疫学はとてもわかりやすいです。) 袋の皮の内側から、ちぎれるようにぽこぽこ飛び出てくるイメージのようです。
まずは、もし、脂肪球が乳管にたまってふさがるなら、という仮定での話をします。
まず、母乳中の乳脂肪のサイズを考えました。いろいろ調べたところ、1-15μmという幅のある数字でした。
大きめに見積もって、直径10μm=10*10-6m とします。
ちなみに小腸から取り込んだ脂肪は、小腸内腔で分解され、小腸上皮細胞でキロミクロンという直径0.2-1μmの油滴となって血液中を運ばれているそうです(参考文献:食と健康’06 P50 放送大学テキスト)。
食べた脂肪がそのまま血液中を流れるわけではないのですね。
次に乳管の太さです。これがなかなか出てきません。私の持っていない本 Textbook of Human Lactation に直径400μmという数字があるそうです。
乳腺内視鏡で0.4mmだと末梢乳管まで観察できると書いてあるサイトを見つけました。
さらにネットを漂うと、超音波画像が載っているサイトを見つけました。ここにも0.4mmの乳管が映っています。
ということで、代表値として400μm=0.4mm=400*10-6mとしました。もっと太い乳管ももちろんあります。狭めの見積もりで考えました。
すごくざっくりな数字です。
で、直径400*10-6mの乳管にびっしりと直径10*10-6mの脂肪球を一層につめたとします。球なので隙間ができますが、できないと仮定してしまいます。
乳管の面積を、球を半分に切った断面積で割る、という荒っぽいことをしますと、一層でびっしり埋め尽くすのに必要な脂肪球の数が出ると思います。
{(400/2*10-6)2π}/{(5*10-6)2π}=1600コ
これ、1000倍=103倍で考えると、直径40センチの土管に直径1センチの玉(たまごボーロくらい)を詰めたら1600コいるという計算になりました。
また、乳管の直径の半分、200μmの厚さたまったとすると、
↑ こんな感じ?
その詰まる部分の体積は
(400/2*10-6)2π*400/2*10-6 ・・・ A
脂肪球1コの体積は、みのうえにしんぱいあーるさんじょう なので
4/3π*(10/2*10-6)3 ・・・ B
AをBで割れば、ざっくりとこの詰まった部分に必要な脂肪球の数が出ます。
A/B=48000コ
スキマがないと仮定してますので、実際はもう少し少ない数字で詰められそうですね。
母乳中の脂肪量は前乳後乳でも違いますし、産後の時期によっても違います。
代表的な数字として、母乳育児支援スタンダードの3.4%という数字を使います。母乳100g中に脂肪が3.4g含まれていることになります。脂肪の比重はこれまたざっくりと0.9g/mlです。母乳は87.6%が水分です。
では、脂肪球はどれくらいの密度で流れているのでしょうか。
乳管を1000倍したモデルとして、上記にも出た直径40センチの土管を例に考えます。(計算しやすくするため)
この土管1メートルにあるたまごボーロ(脂肪球)の量を考えてみます。
ここからの単位はmlです。
土管1メートルの体積(母乳の量)は
20*20*π*100=4π*104ml 約125リットルです。
比重は1と考えます。このうち3.4%がボーロなので、ボーロの重さは
4π*104*0.034=1.36π*103グラム。
1メートル中のボーロの体積は、比重が0.9g/mlと考えて
1.36π*3/0.9=4.7*103ml ・・・ C
直径1センチのボーロの体積は
4/3*π*(0.5)3=0.52ml ・・・ D
CをDでわると、土管1メートルにあるボーロの数が出ます。
C/D≒9100コ
たまごボーロ。ローソンで買った75g 105円。片手にのるサイズです。数えましたら、このボーロのサイズは直径12mm、高さ8mmでした。直径1センチの球をつぶしたくらいだと思います。この1袋には197コ入っていました。
片手いっぱい分。46コです。
まとめます。
直径400μmの乳管1mmが母乳で満たされているとき、その中に脂肪球は約9100コある。
一層に詰まるのに約1600コ必要。200μmの厚さに詰まるには48000コ必要。
脂肪球同士はくっつきあう性質はない。
これを1000倍で考えると、直径40cmの土管1mには、たまごボーロが9100コ(45袋と半分)ただよっている。
一層に詰まるのに約1600コ(8袋)必要。20cmの厚さに詰まるには48000コ(240袋)必要。
ちなみに、上の絵の乳管と脂肪球の大きさは、仮定と同じ40:1で書いています。どうでしょうか。
もちろん乳管内は母乳が流れています。
ここまでは、もし乳腺に脂肪球が直接詰まったら、という話でした。
よく、血管が詰まったという話がありますよね。血栓だとか、ドロドロ血液だとかよく言われています。
あれは脂肪が血管に直接たまる話ではないそうです。
参考までに書きます。
以下、参考文献は雑誌Newton2013年3月号41-63ページです。NHKのためしてガッテンでも同じような内容をやっていた記憶があります。(びっくりした記憶があります。NHKのサイトでは残念ながら探しきれなかったです)
放送大学の上記テキストにも載っています。
なんとなく、コレステロールがたまるなどと言われているので、脂肪やらコレステロールがそのまま血管に張り付いてたまっていき、血管が詰まるというイメージを過去のsariは持っていました。
でも、本当は違うそうです。
血管は3重構造で、内側から、内膜、中膜、外膜となっているそうです。
コレステロールが内膜の細胞のすきまから血管の壁の中に入るんだそうです。そこでたまっていくばかりではなく、マクロファージがコレステロールを掃除しようと戦うのだそうです。ここでコレステロールが掃除しきれないくらいたくさんやってくると、戦い破れたマクロファージとコレステロールの残骸がたまるのだそうです。こうやって血管の壁が厚くなっていき、中の血液の流れる部分が少なくなっていきます。
その血管内の細くなったところが傷つくことがあり、そうなると血小板が集まってきて傷をふさごうとします。
こうなると集まってきた血小板でますます血管内が狭くなり、完全にふさぐこともあるそうです。これが血管が詰まった状態(梗塞)なのだそうです。
血管が詰まるのには時間がかかりそうですよね。お昼に脂身たっぷりのトンカツ食べたらその脂のせいだけで夕方に血管が詰まる、なんていうのはありえないことのようですね。
食と健康は内容がsariが受けた頃からリニューアルしたようです。大きな書店でテキストを買うこともできます。この本は、体に吸収された食べ物がどのように分解され、そこからどのように合成され、体の必要なところに届くのか、ということが化学式(^^; で書かれています。
(ちなみにsariは理科系といっても物理学専攻だったので、生物の知識は高校1年までしかありませんでした。)
乳腺炎になってしまってからの対処法はまた次回です。
参考文献:食と健康’06 P50 放送大学テキスト
Newton2013年3月号P41-63
母乳育児支援スタンダード
追記です。
お友達のDr-bewithyou さんには、この計算より乳管広め、脂肪球小さめの計算があります。
脂肪球が乳腺の細胞から、母乳に出ていく過程
脂肪球の大きさや乳管の直径には幅がありますが、どちらにせよそう簡単につまらなさそうですね。
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