災害時1

災害についてはたいへんデリケートな問題があると思い、今まで書いてきませんでした。でもなんだか心配になることがあったのでsariなりに書いてみます。
災害が起こったときに母乳育児を続けたほうが、人工乳に変えるより赤ちゃんの健康にメリットがある、ということは広く言われています。ですが、同時に、災害を受けた大変な状況のお母さんに母乳をすすめるのはいかがなものか論もよく聞かれます。
sariはこれは一般論であって、個々のお母さんの状況も考えず「母乳を続けなさい」と言っているわけではないのだと考えています。以下、災害時にありえる状況を想像してみます。
災害時には、まず衛生状態がたいへんよろしくない状況が発生します。水不足、トイレ、ゴミの問題なのですね。そして避難所で人が密集した状況では風邪のような病気は感染しやすいですし、お腹をくだすような病気も広がりやすいですね。
そんな中、母乳を赤ちゃんに与える事はある程度の免疫成分を伝えることになるので、赤ちゃんの健康のためにはメリットがあります。器具や水が不足していると調乳するための物資が不足するだけでなく、滅菌して安全に使うことも難しくなります。母乳で育てられる赤ちゃんが災害時も母乳を飲み続けることは、人工乳で育つ赤ちゃんに必要な物資が届く可能性が高まります。そして、災害で日常生活が失われている中、大人も子どもも不安です。その状況でいままでの日常通り母乳を続ける事は赤ちゃんにとって安心感を与える効果も期待されます。
いいことはわかっている、だけどさまざまな事情があります。
出ないように感じている場合、災害のショックやストレスでオキシトシンが出ないために「出ない」と感じるお母さんがいます。母乳は作られているのだけど、うまく外に出て行かない状況です。これは少し時間はかかるけども、また今までのように母乳を与えることができるといわれていますし、実際そうであった経験談を聞きます。
では、避難先で赤ちゃんが泣く場合はどうでしょうか。みな大変なショックを受け心に余裕がない中、赤ちゃんが泣くことにぴりぴりしてしまうかもしれません。そんな雰囲気だとお母さんは赤ちゃんが泣かせないようにしたいと願うでしょう。もしお腹いっぱいになって寝てくれるのなら、母乳で育てていても、ミルクに変えれば寝るのではないか?と期待するかもしれません。無理のない状況だと思います。ただ、赤ちゃんはお腹の満たされ具合だけで眠ったり泣いたりするものではないので、必ずしも泣き止むとは限りません。普段と違う状況に興奮しているのかもしれません。
避難先ですし詰め状態でいるときに、なんの用意もなく周りから悟られないように授乳するのは難しいかもしれません。混乱した状況ではさまざまなことに注意を払う必要があるため(ぼやかした言い方ですが)、哺乳瓶なら気兼ねなく与えられるのに、と思っても無理ない状況があるかもしれません。
上記2つの点は、小さい子のお母さんだけを集めた場所を作る必要があると提案されています。安全で、気兼ねなく授乳でき、少しは子どもが騒いでも大丈夫な場所。同じ状況のお母さんが集まることには意味があります。
避難所に食べ物がない状況で、母乳よりも人工乳のほうが栄養があるのかも?と心が揺れるかもしれません。実際は短期間の栄養の不足は母乳に影響を及ぼしません。母乳は食べたものだけではなく、妊娠中に蓄えた脂肪からも作られています。常に1500kcal以下の摂取が続くと分泌が減るおそれはありますが、日本ではそこまでになる前に物資が届く可能性が高そうです。最初に書いた免疫のことを思えば、この心配はあまり妥当ではないかもしれません。
会えない家族を探しにいく必要があるかもしれません。状況がわからない中、赤ちゃんを連れて行ける状態なのかどうかわからない。もしおばあちゃんがそばにいて赤ちゃんを見ていてくれるのなら、そして人工乳があって利用できるのなら、sariならどうするかなあと考えます。このような状況で人工乳を選んだお母さんが苦しくなるようなものの伝え方は避けたいと常々思っています。
結局どんなときも、根拠のある情報を元にしてお母さん自身が決めることが大切なんだと思います。
母乳を続けるメリットはとても大きいです。お母さんは赤ちゃんにとってよいものを選ぼうとします。ただ、状況が人によってさまざまで、価値観もさまざまです。だからその人の選択は尊重することが大切だとsariは思います。
ただ、今の日本の状況は、その選ぶための「情報」が広まらないのです。決断した後で根拠ある情報を知って後悔するのは辛いです。知識があるということは選択肢が広がるのです。
支援物資として大量にミルクさえ送ればいいという誤解も過去にはありました。上に書いたような、母乳の生成のメカニズムが伝わらず、お母さんたちが不安になったりすることもあります。
災害時の母乳育児の情報提供は、お母さんが選択するために必要です。母乳がいいから続けなさいと上から目線で言っているのではないことを知ってもらいたいなと思います。(とはいえまだまだ支援者の主観からお母さんの選択を評価するうような話は聞かれます。sariも以前災害時ではありませんが、主観から評価されるような状況に苦しんだことがあります。)
続きます。続きでは災害時のために発信されている情報についてまとめます。ミルクを安全につくり、飲ませるための情報も含まれます。これは母乳育児だけではなく、すべての赤ちゃんの健康のために発信されている情報です。とくにカップを使う授乳については、情報が広まることが望まれます。

災害時

Posted by sari